コンパクト生成位相空間の定義、特徴付け、およびその証明

コンパクト生成位相空間(Compactly generated topological space)(あるいは $k$空間($k$-space))は、代数的位相幾何学や圏論的位相幾何学において、関数空間や積空間を心地よく扱う(デカルト閉圏を構成する)ために導入される、極めて重要な空間のクラスです。

以下に、その厳密な定義、3つの強力な特徴付け、およびそれらの詳細な証明をまとめます。なお、便宜上、位相空間 $X$ に対し、コンパクトハウスドルフ空間 $K$ からの連続写像 $g: K \to X$ 全体の集合を $\mathcal{C}(X)$ と表記します。


1. コンパクト生成位相空間の定義

位相空間 $X$ がコンパクト生成であるとは、その位相(開集合や閉集合)が「コンパクトハウスドルフ空間からの引き戻し」によって完全に決定されていることを指します。

【定義】
位相空間 $X$ の部分集合 $A \subset X$ が「$k$閉集合」であるとは、任意のコンパクトハウスドルフ空間 $K$ と任意の連続写像 $g: K \to X$ に対し、$g^{-1}(A)$ が $K$ の閉集合となること(すなわち任意の $g \in \mathcal{C}(X)$ に対して $g^{-1}(A)$ が閉)をいう。
空間 $X$ がコンパクト生成位相空間であるとは、「任意の $k$閉集合は、元の位相における閉集合である」が成り立つ空間のことをいう。

※ 連続写像による閉集合の逆像は常に閉集合であるため、「通常の閉集合 $\implies$ $k$閉集合」は常に自明に成り立ちます。したがって、コンパクト生成空間とは「通常の閉集合」と「$k$閉集合」が完全に一致する空間のことです(開集合で定義しても同値です)。


2. 有用な特徴付け(同値な条件)と詳細な証明

特徴付け ①:写像の連続性による特徴付け

【定理】
位相空間 $X$ がコンパクト生成空間、$Y$ を任意の位相空間とする。写像 $f: X \to Y$ が連続であるための必要十分条件は、任意のコンパクトハウスドルフ空間 $K$ と任意の連続写像 $g: K \to X$ に対し、合成写像 $f \circ g: K \to Y$ が連続となることである。
【特徴付け ① の詳細な証明】

$(\Rightarrow)$ の証明:

$f: X \to Y$ が連続であると仮定します。このとき、任意の $g \in \mathcal{C}(X)$(すなわち連続写像 $g: K \to X$)に対して、連続写像の合成 $f \circ g: K \to Y$ も連続写像の一般的な性質から当然連続となります。

$(\Leftarrow)$ の証明:

任意の $g \in \mathcal{C}(X)$ に対して $f \circ g: K \to Y$ が連続であると仮定します。$f$ が $X$ 上で連続であることを示すために、$Y$ の任意の閉集合 $B$ を取ります。このとき、逆像 $A = f^{-1}(B)$ が $X$ の閉集合であることを示せば十分です。

$X$ はコンパクト生成空間であるため、$A$ が「$k$閉集合」であることを示せば、元の位相でも閉集合であることが従います。そこで、任意の $g \in \mathcal{C}(X)$ ($g: K \to X$)を取ると、集合の基本性質より以下が成り立ちます: $$ g^{-1}(A) = g^{-1}(f^{-1}(B)) = (f \circ g)^{-1}(B) $$ 仮定より合成写像 $f \circ g$ は連続であり、$B$ は $Y$ の閉集合なので、$(f \circ g)^{-1}(B)$ は $K$ の閉集合です。

したがって、任意の $g \in \mathcal{C}(X)$ に対して $g^{-1}(A)$ は $K$ の閉集合となるため、$A$ は $k$閉集合の定義を満たします。$X$ はコンパクト生成空間なので、$A = f^{-1}(B)$ は $X$ の通常の位相における閉集合となります。ゆえに $f$ は連続です。

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特徴付け ②:$k$化($k$-ification)による特徴付け

【定理】
任意の位相空間 $(X, \mathcal{T})$ に対し、補集合が $k$閉集合である集合($k$開集合)の全体を $\mathcal{T}_k$ とする。このとき $\mathcal{T}_k$ は $X$ 上の位相を定め、この位相空間を $kX$ と書く。このとき、
$X$ がコンパクト生成空間である $\iff \mathcal{T} = \mathcal{T}_k$ (すなわち $X = kX$)
が成り立つ。
【特徴付け ② の詳細な証明】

まず、$\mathcal{T}_k$ が位相の公理(閉集合の条件)を満たすことを確認します。

  1. 空集合と全体集合: 任意の $g \in \mathcal{C}(X)$ に対して $g^{-1}(\emptyset) = \emptyset$ であり、$g^{-1}(X) = K$ です。これらはコンパクトハウスドルフ空間 $K$ の閉集合なので、$\emptyset, X$ はともに $k$閉集合です。
  2. 任意の共通部分: $k$閉集合の任意の族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}$ に対し、その共通部分を考えると、 $$ g^{-1}\left(\bigcap_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda}\right) = \bigcap_{\lambda \in \Lambda} g^{-1}(A_{\lambda}) $$ となります。各 $g^{-1}(A_{\lambda})$ は $K$ の閉集合であり、閉集合の任意の共通部分は閉集合なので、これも $K$ の閉集合です。よって共通部分も $k$閉集合です。
  3. 有限個の和集合: 有限個の $k$閉集合 $A_1, A_2, \dots, A_n$ に対し、その和集合を考えると、 $$ g^{-1}\left(\bigcup_{i=1}^n A_i\right) = \bigcup_{i=1}^n g^{-1}(A_i) $$ となります。閉集合の有限和は閉集合なので、これも $K$ の閉集合です。よって有限和も $k$閉集合です。

以上から $\mathcal{T}_k$ は位相を定めます。また、元の位相 $\mathcal{T}$ の閉集合 $A$ は、任意の連続写像 $g$ に対し $g^{-1}(A)$ が必ず閉集合になるため、自動的に $k$閉集合です。したがって、常に $\mathcal{T} \subset \mathcal{T}_k$ ($\mathcal{T}_k$ の方が開集合・閉集合が多く、位相が強い)が成り立ちます。

必要十分条件の証明:

コンパクト生成空間の定義は、「すべての $k$閉集合が、元の位相 $\mathcal{T}$ においても閉集合である」ということです。これは「$\mathcal{T}_k$ の閉集合 $\implies$ $\mathcal{T}$ の閉集合」すなわち $\mathcal{T}_k \subset \mathcal{T}$ を意味します。

すでに $\mathcal{T} \subset \mathcal{T}_k$ は普遍的に成り立つことを示しているため、次の同値関係が得られます: $$ X \text{ がコンパクト生成} \iff \mathcal{T}_k \subset \mathcal{T} \iff \mathcal{T} = \mathcal{T}_k \iff X = kX $$

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特徴付け ③:商空間としての特徴付け

【定理】
位相空間 $X$ がコンパクト生成空間であるための必要十分条件は、$X$ が「コンパクトハウスドルフ空間たちの離散和」からの商空間として表せることである。
【特徴付け ③ の詳細な証明】

$(\Rightarrow)$ の証明:

$X$ をコンパクト生成空間とします。$X$ へのすべての連続写像 $g: K \to X$(ただし $K$ はコンパクトハウスドルフ空間)の全体を添字集合 $\mathcal{I} = \{(K_g, g)\}$ として集めます。

これらのドメインであるコンパクトハウスドルフ空間の離散和(Disjoint union)空間を $H$ と定義します: $$ H = \coprod_{(K_g, g) \in \mathcal{I}} K_g $$ 各成分からの自然な注入写像(包含)を $i_g: K_g \to H$ とします。ここで、全射写像 $p: H \to X$ を、各成分の上で $p \circ i_g = g$ となるように一意に定義します。

したがって、$A \subset X$ が閉集合 $\iff p^{-1}(A) \subset H$ が閉集合 となり、$p$ は商写像です。すなわち、$X$ はコンパクトハウスドルフ空間の離散和 $H$ からの商空間です。

$(\Leftarrow)$ の証明:

ある商写像 $p: H \to X$ が存在し、その定義域が $H = \coprod_{\lambda \in \Lambda} K_\lambda$(各 $K_\lambda$ はコンパクトハウスドルフ空間)であると仮定します。このとき $X$ がコンパクト生成空間であることを示します。

$X$ の $k$閉集合 $A$ を任意に取ります。目標は $A$ が $X$ の通常の閉集合であることを示すことです。$p$ は商写像なので、商位相の定義より $p^{-1}(A)$ が $H$ の閉集合であることを示せば十分です。

離散和の位相の定義より、$p^{-1}(A)$ が $H$ の閉集合であることを示すには、任意の $\lambda \in \Lambda$ に対して、自然な包含 $i_\lambda: K_\lambda \to H$ による逆像 $i_\lambda^{-1}(p^{-1}(A))$ が $K_\lambda$ の閉集合であることを示せばよいです。

ここで、合成写像 $p \circ i_\lambda: K_\lambda \to X$ を考えます。$p$ も $i_\lambda$ も連続なので、$p \circ i_\lambda$ はコンパクトハウスドルフ空間 $K_\lambda$ から $X$ への連続写像です(すなわち $p \circ i_\lambda \in \mathcal{C}(X)$)。
したがって、次の等式が成り立ちます: $$ i_\lambda^{-1}(p^{-1}(A)) = (p \circ i_\lambda)^{-1}(A) $$ いま $A$ は $X$ の $k$閉集合であり、$p \circ i_\lambda$ はコンパクトハウスドルフ空間からの連続写像なので、$k$閉集合の定義より $(p \circ i_\lambda)^{-1}(A)$ は $K_\lambda$ の閉集合となります。

これがすべての $\lambda \in \Lambda$ について成り立つため、$H$ の離散和位相の定義から $p^{-1}(A)$ は $H$ の閉集合となります。そして $p$ が商写像であることから、$A$ は $X$ の通常の閉集合です。したがって、$X$ はコンパクト生成空間です。

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